歴史的な円安と言われる状況に関する考察

今日は少しばかり頭の体操になるようなお話を。

いま、1ドル161円を超える円安ドル高になっているのがニュースになっていますねえ。とんでもない円安だって、みんなが言ってる。

中には少数派だけど、円安は長期的に見て日本にとってプラスだと言う人がいて、近隣窮乏化やハイテク業の復活などを謳う人もいる。

ところが、大企業の集まりである経済団体でさえ「行き過ぎた円安だ」と言い始めた。

では、この国の政府はどう考えているだろうか?それを考えてみたい。

政府は1200兆円を超える借金をしている。物価が上がり通貨の価値が下がることは、借金の価値を下げることにつながっている。とすれば、物価が上がりやすい円安は政府にとって有利だ。

外為特会にドルをたんまりと持っている政府は、そこでも為替差益を含み益として持っている。これも円安が有利だ。

円安になると大企業、特に輸出企業は過去最大の利益を獲得するだろう。例えばトヨタの2兆円の利益のうち半分は為替差益だ。ということは、政府の法人税収入も円安によって増える。

ましてや、物価が上がるだけで、消費税は税率そのままでも増収となるのだ。物価上昇分に対する消費税率だけ税収は増える。

どうだろう、ここまで見ていると政府は円安ウエルカムではないか。

過去40年近い円高ドル安の時代に、日本の大企業はほとんどの製造業が海外に拠点を広げ、対外投資を増やした。今の経常黒字が意味するのは、対外純資産から得られる収益だ。そしてそれは外貨のまま再投資される。

円安になれば、その対外投資を国内に戻して来るだろうか?いや、それは望み薄だろう。人口が減る一方で電気代もバカ高い国に、生産設備を増やすことは期待できない。

そんな状況で日本国政府ができることは、上に書いたように為替差益に課税することだ。すると、円で納税しなければならない大企業は対外純資産の外貨を円転するしかない。そうやって外貨を円に無理やり引き戻す効果すらも「円安」にはある。

行き過ぎた円安を調整するために金利を上げよと言う人もいる。そんなことしたら、借金大国日本は金利負担で財政が痛む。日銀の保有する国債の価値も下がる。デメリットしかないのだ。

このように、日本国政府にとって、円安はメリットしかない。これが数年続けば、借金がゼロになるほど儲かっている。

もしデメリットがあるとしたら、生活コストが上がる一方でステルス増税を受けている国民や、外貨資産の評価益に課税される大企業が、ガーガー文句を言ってうるさい、ぐらいのことだろう。

最初は日本円でしか給料をもらえない公務員が、その価値が下がって海外旅行に行けなくなったことで円安を悪と考えたものの、よく考えてみるとだんだん政府にとって有利に進んでいることに気づき始めて、それなら少し我慢しておくか〜と黙るようになってきたのだろう。私のようなものでもこう考えているのに、あの優秀な財務官僚がそれに気付かないはずがない。

極端かもしれないが、プラザ合意前の水準になると思う。それが自由な為替市場というものだと思う。そして誰もそれを止められないのだから、この国の国民は、プラザ合意前の生活に早く戻ることを目指すべきだと思う。

その「次の40年」が始まったのだと思う。