謎は解けた!じっちゃんの名にかけて!~河川敷キャンプ場殺人事件File2(この物語はフィクションです)

「そ、そんな!何を言い出すかと思ったら…私がそんなこと出来るはずないじゃない!」

「ああ、みんなまんまと騙されたよ、ダッチさん。あんたみたいな小柄できゃしゃな金髪美人が、あんな屈強な男を倒して心臓をペグで撃ち抜くなんて…誰も想像もしなかった」

「そうよ。私に出来っこないわ!」

「そ、そうだぜ。ダッチさんにそ…そんな事できないだろ?」

「いや。それが出来るんだ。これを使うのさ」

「これって…ただの炭じゃないか」

「ああ。ただの炭さ。でもこれに火を付けると立派な凶器になる」

「あ!」

「気付いたみたいだな?そうなんだ。一酸化炭素さ。被害者が寝ている間にテントの中にこの炭に火をつけて焚き火台ごと入れる。昨日は風が強く寒かったし雨が降っていたからベンチレーターが閉じられてテントの中は密閉空間になってた。すると暖かい空気で一酸化炭素はテントの上の方にたまる…」

「な、何を言っているの…」

「ダッチさん…いや、ダッチ!お前はそれを利用したんだ。被害者はインナーテントで寝ていた。まだテントの下の方は酸素が充分にあり安全だ。お前はテントのリビングに腰をかがめて入っていき中の被害者に声をかけた。そして、おそらく何か男を誘惑するようなことを言ったのだろう。目を覚ました被害者はリビングで四つん這いになっているお前を見て、ニヤつきながらインナーテントを同じように低い姿勢で出てきた。インナーテントの出入口のファスナーが下の方にあるのはそのためだ」

「そ、そんなこと…」

「彼がリビングスペースで靴を履いて立ち上がった瞬間、上の方にたまった一酸化炭素の中に頭を突っ込み吸い込んだというわけさ。彼は一酸化炭素中毒になり倒れて気を失った。そしてお前はあんな酷いトドメをさした。その時ペグを打つ音は聞こえたけれど、強風であおられたテントのペグを誰かが打ち直しているとみんな思ってた。まだ10時の消灯の直後で時間は早かったし、おりから強風で他のテントでもペグを打ち直す音が聞こえていたからね。だからその時は誰も不自然には思わなかったんだ」

「…」

「だけど、警報機の誤作動の後、0時過ぎに風もなくなってからペグを打つ音がした時には、みんな驚く。それで被害者のテントに駆け付ける誘導に使ったんだ」

「何を言っているの。ペグを打つ音がした時には私はキャンピングカーにみんなといたのよ?」

「ああ。おそらくその音も被害者が音楽を聴くために持って来ていたBluetoothスピーカーを使って鳴らしたんだろう。」

「なるほどな…。その手を使えばあのサイレン音も自由に鳴らせたということか…なんてふざけたヤツだ。そうやって一人目の犠牲者を出したというわけか」

「いや。違うんだ。ひとり目じゃない」

「何だって?」

「あの元プロレスラーの彼は二人目の犠牲者だったんだ。ほら、俺たちがこのキャンプ場に来た初日の事故を覚えてるだろ?救急車が来て誰か知らない人が運ばれていった」

「ああ、あれはたしか一酸化炭素中毒…ま、まさかあれは事故じゃなかったのか?」

「そうさ。あれも犯人が仕組んだワナだったのさ。もし、元プロレスラーが誤って一酸化炭素中毒で死んでしまっても同じ事故に見せかけるため…最初はそう思った…でも違う…考えたくもないけど…あれは、どれぐらいの時間で一酸化炭素がたまって下まで降りてきてしまうかの実験…」

「何だって?そんな恐ろしいことが…」

「ああ。これに気付いたのは、あの事故で救急搬送された人のテントと、元プロレスラーが寝ていたテントが同じ型だったからさ。そうやって見ず知らずの他人まで巻き込んだ無差別殺人だったんだ」

「アッハッハ!!」

「なんだ、何がおかしい!?」

「やめてよ勝手な思い込みは。全部あなたの想像に過ぎないじゃない?だいたいキミの言う通りだとして、なぜ警報まで鳴らしてみんなを呼び寄せる必要があるのよ。大騒ぎになるだけじゃない。そんなことしなくても私にはキャンピングカーにいてアリバイがあるのよ?」

「簡単さ。メッセージを開封済みにしなきゃアリバイが成立しなかったからさ。ひとりで彼のテントに行くわけにいかないし、駆け付ける人数が多いほど混乱に紛れて指紋認証がしやすかったんだろう」

「それも想像に過ぎないわ!第一、私はその次の事件が起きた時もアリバイがあるのよ?証拠もなしに疑いをかけないで欲しいわ」

「その三人目の犠牲者の事件だけど、あれもお前にしかできないんだ。今からそれを証明してみせるさ。

じっちゃんの名にかけて!」

「え?あいつのお爺さんって誰?」

「さあ?…知らね~」

「何かの間違いじゃない?」

「いやあ、よくここまでセリフだけで来たねえ」

「いやいや、むしろよくここまで読んだねえ?」

( ͡° ͜ʖ ͡°)/thank you!