この連続殺人事件の犯人はお前だ!~河川敷キャンプ場殺人事件File1(この物語はフィクションです)

「犯人はお前だ!」

「え?こ、これは何を突然言い出すのかと思ったら…」

「いや。これはお前にしか出来ないことなんだ」

「おい、いったいどういうことだ?」

「そうよ、どういうことなの?」

「このキャンプ場で起きた連続殺人事件の犯人『漆黒の鉄なべ』はこの人だってことだよ」

「ちょっと待ってくれ。マンガじゃ確かに犯人にそんな呼び名を付けることがよくあるが、その、『鉄なべ』ってのはウーン…どうだァ…」

「ああ、今から説明するよ。この『漆黒の鉄なべ』がどうやってこの河川敷キャンプ場で連続殺人を犯したかをね」

「いや、だからその鉄なべっていうネーミングがだなぁ…その…ダサいっていうか…えーい!まぁいっか!」


「ところでその…鉄なべの起こした最初の事件だが、あれはテントの中で一人目の被害者が死んでいた事件だ。彼は元プロレスラーでそう簡単に襲われたりしないみんなそう思っていた。だから彼だけは一人でテントに寝ることになった。彼は身体も大きかったし、テントは狭いしな。だが事件は起きた。あの謎が解けたっていうのか?」

「ああ。あの殺人予告が届いて、どちらかというと怖がっていたのは女の人だけ。なぜなら、ここにいる男の人は何故か全員が格闘技でそれなりに有名な人ばかりだったからね。何かのイタズラだとかいって取り合おうとしなかった」

「うん、そうだったわ。それで私たち女の人だけはみんなキャンピングカーに集まって寝ることにしたの。みんなで一緒なら安全だって」

「それ以外にも、この事件は不自然なことが多かった。例えば、被害者はインナーテントで寝ていたはずなのに、彼が死んでいたのはインナーテントを出たリビングスペースの地面の上。しかも無残にも極太のペグで心臓を撃ち抜かれて死んでいた。寝ているところを襲われたのならインナーテントの中のはずなのに」

「それはそうだが…それが何の意味があるんだ?」

「順を追って説明するよ。警察の推理じゃあ彼はインナーテントの中で寝ていたところを、スマホのメッセージで起こされたって言ってたよな?そのメッセージはキャンピングカーにいた女の人たちが一人でテントに寝ている彼にふざけて送ったもので、送信時間が夜中の23時58分。さらにそれが『開封済み』になっているから、少なくともその時間までは彼は生きていたことになるって話だったよな?」

「ええ、そうよ」

「その直後、0時00分ちょうどにあの放水警報の誤作動があって、キャンプ場にサイレンが鳴り響いた。テントにいた男たちは全員が驚いて、眠気も吹っ飛んですぐにキャンピングカーの前に走ってきたんだ」

「うん。ここは河原のキャンプ場だから、上流のダムが放水されたらすぐに堤防の上に停めてあるキャンピングカーに集まることを初日に確認していたからね」

「男の人は被害者の彼だけが一人でテントに寝ていた。彼以外はみんな二人1組でテントに寝ていたから、全員が誰かと一緒に行動していた。女の人たちはもちろん全員がキャンピングカーの中にいた。だからここにいる全員にアリバイがあるってことになる。そうなんだろう?」

「もし、被害者が殺されたのが本当にその時間だとしたらね」

「おいおい、おかしなことを言うなぁ。だからメッセージが開封済みに…」

「まあ、待ってくれ。もう少し状況を整理しようよ。俺たちがキャンピングカーに集まってすぐ警報は止まり、その直後に突然、暗闇の中でペグを打ち付ける金属音が聞こえて、俺たちは、そこに彼だけがいないことに気付いた。それで俺たちは彼のテントに急いで駆けつけた。そして死体を発見したというわけ。時刻は…たぶんそんなに時間はたってないから、0時5分くらいだろう」

「そうだ。そして、死体の横に彼のスマホが落ちているのが発見されたんだぞ?パスコードを解除できないから今は確認できないけど、メッセージを送った側が開封済みになっているんだから受信されてるのは間違いないだろう?」

「そうよ。これを見て。あの時、みんなで面白がって『あの元プロレスラー実は怖がってんじゃないの?』なんてふざけて、それで私がみんなを代表して送ったメッセージがこれよ。ほら『開封済み』になってるじゃない」

「でもこのメッセージを開封したのが犯人だとしたら?」

「なんですって?」

「おい、どういうことだ?」

「そのメッセージは送信してい開封されたか覚えてる?」

「ええっと…たしか最初は開封されなかったわ。もう寝てるのかななんてみんなで言ってたもの。でもサイレンで大騒ぎになって、みんなでこのテントに駆け付けたあと、ふと見たら開封済みになってたの。それって、その数分前まで彼は生きていたということよね?」

「それが犯人の心理トリックだったんだ。犯人は彼を殺害したあとキャンピングカー戻り、皆と合流した。そしてふざけたフリをしてメッセージを送ろうと話を持ち出した。メッセージを送るのは誰でも良かったんだ」

「なんてこと…」

「そして、何らかの方法で放水警報を鳴らして皆を集めた。あの誤報も犯人が仕組んだワナだったんだ。そして開封済みにすることで被害者がつい数分前まで生きていたかのように偽装したんだ」

「し、しかしこのスマホを見てみろ。今もロックがかかっているし、殺された本人以外はパスコードを解除することは不可能だぞ?」

「いや、そうじゃない。ほら見てて…(ゴソゴソ…)」

「あ!ロックが解除されたわ!?」

「…なるほど。指紋認証か…」

「そうなんだ。犯人は皆が彼を探してテントまで移動することを見越して、彼のスマホを隠しもっておき、みんなが死体を見て混乱している騒ぎに紛れて、死体の親指で指紋認証して開封済みに変えたんだ。いま俺がやったみたいにね。そしてあたかもスマホが死体のそばに落ちていたのを発見したかのように演技をしてみせた」

「じゃああのとき、彼の手をとって泣きながら名前を叫んでいたのは!?もしかして!?」

「そうなんだ。指紋認証していたんだ…そうだよな?漆黒の鉄なべ…いや…

ダッチ=オーブン!」

「おいおい、ちょっとまて、ダッチさんはアメリカからこのキャンプにたまたま参加されたんだし、女の人で身長も低くて細いのにあの大男を…そりゃ無理ってもんだぞ?」

「いや、それよりもなんだこの展開は?ここはHYMER LIFEブログじゃないのか?」

「いいんだよ、キャンプつながりで。だって同じような記事ばっかで飽きるじゃん。ちょっとは変わったことしねーと」

「アメリカ人だからって人の名前でダッチオーブンってのもさあ…なーんか無茶苦茶だなあ」

「それがHYMER LIFEさ!」( ͡° ͜ʖ ͡°)

(つづく)