新ジャンル〜ソーラーパネル小説。何も無いところから電気が生まれるコノ快感

第1章 目覚め

それはある日の朝のことだった。目がさめると、窓のブラインドの隙間から陽が射してHYMERくんのダイネットテーブルに一筋の光の線が走っていた。まだ寝起きの私は、髪を右肩に揃えながらプルダウンベッドの上からその光をぼんやりと眺めていた。

昨夜は何時頃に眠りについたのか覚えていない。えらくグッスリと寝たものだ。そういえば寝る間際になって雨音が聞こえたのを思い出した。HYMERくんは雨粒の落ちる音をよく拾う。アルミでできた軽量ボディだからだろう、けれどその音も車中泊には心地良い子守唄に聞こえるものだ。

昨日の夜は寒かった。氷点下とまではいかないが、いつものコールマンの寝袋を広げただけでは寒かったので、中に電気毛布をかけて寝た。電気毛布はYETI400充電池につないだが、サーモスタット内蔵なので充電池の使用量はまだ40%ぐらいは残っているようだ。

ところがそこで、あれ、待てよと気づいた。雨の音がしていたにしては、この陽射しの走り具合はどうだ。隙間からかろうじて射し込む光にしては、かなり強くて明るい。

そこで私はプルダウンベッドのハシゴを降りて、窓のブラインドを開けてみた。その瞬間に目が痛くなるほど強烈な光が射し込んで室内…いや車内を明るく照らし、一気に目が覚めた。

「なんだ、天気いいんじゃな〜い。こんなに陽射しが強いのは久しぶりね」

そう言いながら私はそそくさと運転席の右側に立てかけてあったNOMAD100を取り出してHYMERくんの外に出た。そしてさらに眩しい陽射しの中で、NOMAD100を開いてみた。


うん、これはいいぞ。ぐんぐんと発電量が上がっていく。


なかなかの高出力だ。こりゃあ面白い。この調子で昨夜の電気毛布に使った電気をまた貯めて取り返せるかもしれない。

 

第2章 悪戯(いたずら)

太陽光発電の面白いところは、まったく何もないところから電気が生まれてくるというこのお得感である。この何とも言えない得した気分は最高だ。まるで自分の家の庭から石油が湧いて出てきたような、そんな錯覚に陥る。ただ、本当に庭から石油が湧いたら、クサくてもう住めないだろうから困るんだが…。

ちょっとイタズラしてやろうと思い立ち、ソーラーパネルを半分に畳んでみた。


写真では分かりにくいが、右端の2枚がたたまれて、発電出来なくなっている。さあ、これでどうなるか見てみよう。写真も撮っておかなくちゃ。

その時だった。
「おはようございます!」

不意に声をかけられて私は戸惑った。何処から声が聞こえたのかとあたりを見回すと、ちょうど坂の上の方に歩いていく人影が。上の写真にもその姿が写っている。

「あ、ああ、お、おはよう、ございますぅ」

何も動揺することはないのだが、イタズラをしているという心理的な二ヒヒなところを他人に見られた恥ずかしさからくる胸騒ぎが、朝の挨拶の文字数を増やしていた。

立ち去る人の後ろ姿を見送り、私は気をとりなおして、車内の充電池を見にいった。


ガクッと下がっていた。当たり前だ。予想通りの結果だった。では、イタズラは元に戻しておこう。

第3章 創意工夫

次にまたひとつ気づいた。

日光の向きに直角になる方が発電量が上がるんじゃないか?そう考えた私はこの角度で置いていたソーラーパネルを、


こうしてみた。


するとこうなった。


ちょっとだけ上がったけど、ほとんど変わらないな。

秋の陽射しでも充分に発電することがわかって、こりゃあ楽しいオモチャを買ったなあとシミジミ思いなおすのであった。

HYMERくんの目の前の石垣に腰掛けて、外で朝の太陽の光を浴び日向ぼっこをしていたら、木の上で小鳥がピロピロと鳴き始めた。何ものにも代え難い至福の時である。

最終章 無人発電

その後、私たちは車を停め直して、太陽の方角へとフロントガラスを向けて、遊びに行くのであった。

おしまい。