ヨーロッパリベンジの旅で、これが一番思い出に残るだろうと思いついた旅先がありました。ブリュッセルから少しオランダ方面へと戻る(昨日の電車でも途中に通ったのですが)ところに、アントワープという街があります。
最近は、都市の名前を現地の呼び方で表すことが多く、GoogleMapには「アントウェルペン」と書いてありました。
明日はどこに行こうか?
とくに考えてないよ。どこがあるの?
アントウェルペンか、ブルージュかな
聞いたことないなあ。ブルージュっていうのは水曜どうでしょうで聞いたことがあるけど
ベルギーのガイドブック見る?
この旅行には、ベルギーのガイドブックを持ってきていたのでした。昔々にベルギーに行きたいなあと言ってた頃に買った本なので、情報はかなり古いのですが。
あ!アントワープだ!
地図で見た時はアントウェルペンとなっていたので気付かず。
これは、2枚のルーベンスの絵を見なきゃ!
それから、話は始まります。
次の日の朝。近くの蚤の市へ行って、朝食を食べながら。
フランダースの犬?
そうだよ。このお話はとても有名なんだけど、とっても悲しいお話なんだよね
それから、アントウェルペンへ向かう道中に、お話を聞かせます。興味を持って見れば、子どもでもその絵の価値がわかるというもの。
ビックリするような電車に乗って、アントウェルペンへ移動します。
ネロは、最後にこの絵を見たくて教会に行くんだ。その時はもう死ぬことを覚悟していたんだ
どうして?
食べるものを買うお金も絵を描くことに使って、コンクールに出展したんだけど、優勝できなくて夢に破れたの
パトラッシュは?
唯一の友だちだったアロアに預けたんだよ。けど、ネロが出ていった後に何も食べなくなって、スキを見て逃げ出したの
ネロは村から、この街へ牛乳を運ぶ仕事をしていたんだけど、ある日、火事の犯人だと疑われて仕事がなくなるの
村の人はみんな悪い人たちだね
みんなネロが犯人だと騙されていたんだけどね
ネロの最後の夢がコンクールで優勝すること?
そうなんだ。賞金だけでなく絵の勉強もさせてもらえるんだ
アントワープの駅はブリュッセルよりもずっと明るい駅でした。
聖母大聖堂へと頑張って歩いていきます。
ネロの見たかった絵って、どうして見れなかったの?
教会にお金を払わなければ見ることができなかったんだ。ネロは絵を見るお金が無いほど貧乏だったんだよ
それなのに最後に見れたの?
その日は大雪で誰もいなくて、カーテンがかかっていなかったんだ。
やっと聖母大聖堂まで歩いてきました。
どの絵がネロの見たかった絵なのかなあ
この一番奥にある絵をまず走って見にいくんだ
ルーベンスのキリスト昇架です。
この人は何をしているの?
キリストといって、街のみんなに悪い人だと誤解されて、はりつけにされてしまうんだ
そして、もうひとつ反対側にあるのが、キリスト降架です。
この人は何をしているの?
これは、街の人たちが、自分たちが間違っていたことに気付いて、キリストを助けているところさ
ネロはこの2枚のルーベンスの絵を見て、この絵の前でパトラッシュと一緒に死んでしまうんだ
ふーん
日本語でこんな説明書きが書かれていました。
そして、最後にネロとパトラッシュが、天使たちと一緒に天国へ行くあの有名なシーン…あのシーンが教会の中央いちばん奥にあるこの絵をオマージュしたものだと気づきました。
そうだったのかあ
なるほど〜
日本のアニメで有名になって、現地の人も知らないうちに観光客がたくさん訪れるようになるなんて、まあ、不思議な気持ちもするけれど。
たぶんだけど、ネロのお話は、キリストの生涯になぞらえて作られているんだろうな。
そんなことに気付かせてくれたアントウェルペンでした。