ある日のこと、夜中に用事を思い出して家を出てると、突然首元にチクリとしたかと思うと急激に目の前が真っ暗になった。そこまでは記憶しているのだが、眼が覚めると何やら全く知らないところへ誘拐されて来たのだった。
「おい、目が覚めたのか?」
その声を聞いてふと目をやると、周りに女をはべらせた態度のデカい男がいた。
「ここは何処だ?」
「何処だっていいさ」
そう言ってその男は私の頭を押さえつけて来た。
「ここで生きていきたけりゃ、俺の言う通りにするんだな」
なんとも理不尽な話で耳を疑う。しかし、右も左もわからない都会に来ちまったようで薄気味悪い。何もかもが人工物で出来ている。
「ここはいい所だぞ。朝昼晩と召使いが全て用意してくれる。何も働かなくていいんだ。毎日寝て、毎日遊んでりゃあ良いってことさ」
どうやら身代金目的の誘拐ではないようだ。もちろんこの男も犯人ではない。むしろ同じように誘拐されて来たのかと思われた。
「おまえ、北朝鮮にでも連れて来られたのかと思ったか?」
そう言ってその男は大声で笑いだした。
その時、何か音を立てて動いて来るモノがあった。まるでベルトコンベアのように左から右へと四角い箱が横すべりに動いていく。
「おい、あれは何だ?」
「あれはな、俺たちの食事の材料だよ。毎日ああして運ばれていくんだ」
「どういうことだ?」
「もうすぐわかるさ」
しばらくして、召使いと思われる人物がやってきて、ステーキ肉を給仕していった。なんということだ。この国ではほとんど何も働かなくても、こうして食事が出されるのか!?なんて幸せなんだ。
働かなければ、生きていくことなど出来ない、そんな男は生きる意味がないと小さな頃からばあちゃんに教えられてきた。それがどうだ、こんなユートピアがこの世にあるなんて…
「これを食ってもいいのか?」
「ああ、食べろよ。どれだけ食っても余るほどありつけるさ」
「そりゃあもう自由なもんだ。好きなだけ寝られるんだからな」
「しかし、あのベルトコンベアに乗せられて流れていくのは?」
「ああ、ありゃあいずれ俺たちの胃袋に入っちまう、エサさ」
「しかし、さっきの召使いと同じように俺たちに食事を運んでいるじゃないか?」
「ああ、そう見えるだろう?あれはな、あの中で選ばれた者だけが、召使いになって生き延びることができるのさ。それ以外の奴はほとんどはエサになる。可愛そうにな」
そうなのか…
あのバスに乗っている人間は全てエサになるために運ばれているのか…知らなかったなあ。
ここはサバンナとはまるで逆じゃないか。人間より俺たちの方が偉いんだ、こんなに楽しいことはないぜ。
と、ライオンが申しております。
こんなのもあるよ
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